【書評】図説 ダンスの解剖・運動学大辞典 - TopicsExpress



          

【書評】図説 ダンスの解剖・運動学大辞典 ★表紙画像を含む書評はこちら mmssm.jp/book-rev/book-rev014.html ★書評一覧はこちら mmssm.jp/book-rev/book-rev000.html ★購入はこちら amazon.co.jp/gp/product/4890134387/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4890134387&linkCode=as2&tag=mmssm-22   副題は「テクニックの上達と損傷予防のための基礎とエクササイズ」。英文の著者名はKaren Clippinger、原著名は“Dance Anatomy and Kinesiology”。厚さ約40mmのまさに「大辞典」と呼ぶにふさわしい大著。  第1章「骨格系と運動」以下、筋系、脊柱、骨盤帯と股関節、膝関節と膝蓋大腿関節、足関節と足、上肢、ヒトの動きの分析の計8章だて。  著者はワシントン大学で運動学修士号を取得しているが、その研究内容は「身体のアライメントと動きを向上させ損傷のリスクを減らすために、科学的原理をダンスに適用すること」で一貫している。UCLA、スクリップスカレッジ、ワシントン大学、カルガリー大学などでダンスの解剖学と運動学を教えている。  本書はその「ダンスの解剖学と運動学」の詳細にして丁寧かつ深い洞察とダンスへの愛に満ちた書である。  スポーツ医科学においては、各競技への医科学諸分野からのアプローチがなされてきたが、ダンスも高度な身体表現であり、その芸術性は身体によって支えられている。各競技に「解剖学と運動学」が不可欠であるのはダンスにおいても同様である。こうした本では解剖学はあまり深く細かく突っ込まないことが多いが、本書では解剖学の専門書を凌駕するほど詳細に記されている。専門用語には英語表現も併記し、やや難しい用語にはルビが付されている。初学者への編集上の配慮が読み取れる。本書を熟読すれば、解剖学の知識は格段に向上するであろう。  監訳者は「監訳者序文」で、「『舞踊』と『科学』をつなぐ接点は人の『身体』だ」と記し、「身体づくり」の手段としての舞踊と「芸術」としての舞踊に分けて述べる。前者は、特に20世紀後半、健康志向と体力づくりの隆盛にともない、現代では、トップアスリートから市井の人々まで愛好者は広がっているとし、本書は「筋・骨格系を中心に、その構造と機能、強化法、さらには技法の適否や禁忌・検査法などを、800近い文献をもとに解説した比類ない舞踊の機能解剖学書である」と言う。  後者に関しては、本書ではバレエやモダンダンスが基本をなしていると述べ、「肉体の極限的な能力は、どこか自然の生命の営みと相容れないところ、天上的肉体と地上的健全さの相克にあり、このことが、一方で『科学』との接点を強めてきた」と言う。そして「プロのダンサーの損傷率の高さや症状、対処法などは、すでに20世紀後半の整形外科的な文献で網羅され、損傷部位(下肢系)の偏りは、下肢を中心とした本書の構成に反映されている。きめ細かな筋系エクササイズ事例は、近年の目覚ましいスポーツ・運動科学の成果を踏まえたもので、トップレベルの身体をいかにつくり、いかに維持するかを前提にしている」と記している。  わが国のダンス医科学は近年注目が高まり、ダンサー、ダンス教師、振付師だけでなく、医師、理学療法士、トレーナーなどで関心を寄せている人も増えてきた。  当然ながら多数の図や写真が用いられているが、いずれも完成度が高く、この大辞典はダンス関係者のまさに座右の書となるべく生まれたと言ってよいだろう。もちろん、スポーツ医学や運動学を学ぶ人にもおすすめしたい大著である。各競技においても、このような本があればよいのにとも思う。(清家輝文) 著:クリッピンガー 監訳:森下はるみ 監訳協力:井上貴央・乗松尋道 B5判 464頁 9,500円+税 西村書店 2013年9月26日刊
Posted on: Sun, 29 Sep 2013 23:59:56 +0000

Trending Topics



Recently Viewed Topics




© 2015